「育児は仕事の役に立つ」を読んで、モヤモヤがやってきた。

COLUMN

育児の有用性を、明文化してくれた一冊。

「育児は仕事の役に立つ 『ワンオペ育児』から『チーム育児へ』」浜屋祐子 中原淳 著 光文社新書

こちらを読みました。社会での女性の進出とは裏腹に、変わらない家庭内での役割。男も女も様々な葛藤を抱える中で、今まさに子育てに奮闘中のお二方が、育児により身につくスキルや伸ばせる能力について、多面的・論理的に分析する対話形式の一冊です。

私は会社で第1号の育児復帰者だった過去があります。職場ではお荷物的な存在で、劣等感しか持てませんでした。当時、会社で自身のキャリアデザインについてのヒアリングシートに「仕事をする上で、あなたの強みはなんですか」という質問項目がありました。私は途方に暮れてしまいました。私は貢献できていない。私に強みなんてない。絶望的な気持ちになりながら、ふとこんなことを書きました。

「この会社で、育児をしながら働いている唯一の人間であることが私の強みです。」

当時は根拠も何もありませんが、直感的にそう思ったのです。この気づきが後の私を救ってくれました。「育児は仕事の役に立つ」は、あの頃の私に読ませたい一冊。これから育児をする人、今まさに育児真っ只中の人にオススメです。

本当のことは誰も言わない

オススメ、と言っておいてなんなんですが、この本を読んで、私はモヤモヤしてしまいました。これからの時代はチーム育児と言いながら、チーム育児で得られる本当に大切なこと、この本には書かれていません。今、子育て真っ只中のお二人が書かれた本ですから、結果何を得られたかを総括できるのはきっと何年か後のことでしょう。上から目線を覚悟で、この本に足りない本当のことを書きます。

何年か前のことになりますが、ワークライフバランスで有名なある女性の方の講演会を聞きに行ったことがあります。タイムマネジメントや、夫がどうやったら家事をやってくれるようになるかなどを話されていました。

「どんなにまずいお味噌汁でも、美味しい、と褒めるんです」

とにかく、褒めて、おだてて、夫に家事をやってもらう。そんなことを彼女は言っていました。講演が終わった後、私は猛烈にモヤモヤしました。褒めておだてて、パートナーに何が何でも家事をやらせる、そんなことがワークライフバランスで大切なことなんだろうか。褒められ、おだてられ、まずい味噌汁を作ってる彼女の夫さんは、彼女がこんな講演をしていることを内心どう思っているのだろう。本当はもっとドロドロした気持ちがあるんじゃないの?モヤモヤして言えないことがあるんじゃないの?そんなことを思いました。

私には離婚経験があります。チーム育児はうまくいきませんでした。でも一番辛い時は誰にも心の内を伝えることはできせんでした。だって、幸せになるって結婚したのに、幸せじゃない、って言えないじゃない。誰だって、本当のことはなかなか言えないのです。

講演会でのモヤモヤが晴れない中、本当のことを話せる場を作ろう、と企画したことがあります。私は、数年前からハナジョブ(現ハナラボ)という女性のリーダーシップと創造力を育む団体のお手伝いをしており、産後の女性のサポートをするマドレボニータさんとコラボして、「ワークライフバランスについて本当のことを話そう」というワークショップを実施しました。

その時の映像がこちら

安心、安全な場で、初めて会った人とは思えないくらいの深い話、本当の話が繰り広げられました。困難を通じて、得られた圧倒的な信頼関係、そして個として相手を尊重することの大切さなど多くを学びました。

一番近い人と真剣に向き合うことで得られるもの

私が今考える、「育児」を通じて得られるもの。信頼関係の構築力と多様性への理解(パートナーであっても、自分とは違う「個」である)以外に、もう一つあります。それは、深いレベルで自己理解が進んでいくこと。育児においては自分と向き合わざるを得ないし、思い通りにならないことがあまりにも多すぎて、自分の弱さを嫌という程見せつけられます。そんな中で、見たことない自分(今まで意識していなかった自分)が出てきますし、「見たことない自分」=「無意識の自分」が表出し、その自分と向き合うことはつまり自己理解が進むということです。

子供が大きくなってくると、親子関係でも同じ課題にぶち当たります。もともと他人であるパートナーより、自分の子の方が「個として尊重する」ことは難しいです。自分のお腹の中にいた子は、どうしても自分の一部のように思ってしまうから、知らず知らずのうちにコントロールしようとしてしまいます。ここでもやはり見たことない自分に出会うことになります。そんな状況に陥ったとしても、同じように信頼関係の構築、多様性理解、自己理解の深化にフォーカスすることが大事です。

どうでしょう。育児によって得られるこれらの要素は、仕事でも役に立ちませんか?

心の中を、見せ合うことの大切さ

自己理解のためのメソッドであるMBTI認定ユーザーとして、半年間で80名以上の方にセッションを行ってきました。参加者の方々にも、こういうとき心の中で何が起こっているかを話してもらっています。自分と違うタイプの人の感じ方や考え方に、「え!そうだったんだ!」と皆さんびっくりされます。それは、身近な人であっても同じです。「そんな風に感じてたんだ」と知らなかった一面を見つけたご夫婦もいらっしゃいました。

それほど、心の中は見えていないのです。日本人お得意の「察する」ことは、所詮自分の尺度でしかありません。ほとんど勘違いと思った方がいい。

もしも今、身近な人との関係でうまくいっていないと感じているなら、まずは自分の心を見つめて、出てきた気持ちを伝えることから始めてみて。今までとは違う関係性や解決の糸口が見えてくるかもしれません。

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